紅い三日月の夜、嵐は来ず サントラを聴く

昨晩折りしも和歌山で震度5強の大地震のあった後のこと。東京23区に大雨洪水警報が出たんですが風一つ吹かず星出てました。やけに紅い針のような三日月が地平線近くの空を薄く照らしていました。

こりゃ降らないなとランニングに出かけたわけです。等々力渓谷という23区唯一の渓谷と自称する谷間がありまして、その細長い森林公園のそばまできたときのこと。とつぜん左頬をかすめて黒いものが横切りまして。ばかでかい黒アゲハか、蝙蝠のようなかんじでした。燐粉が目に入るかと思うくらい顔面来たんですが、周りを見ても何もいないんですよ。

で、街灯に照らされたアスファルトを見ると、黒い小さな影が舞っていました。

小さいといっても影からいってやっぱりばかでかいチョウくらいのものなんですよ。この時期夜に出る巨大な蛾っているじゃないですか。オオミズアオとか昔はよく見たし、最近はスズメガの類が増えている(但し飛び方はスズメガではなかった)。灯りに集まったのかなあと街灯のほうを見ました。でも、何も無い。

街灯はおろか、影の右往左往しているその上空一帯に何も見当たらないんです。はあ、こんなことって。夜ですけど、街灯の多い場所なので蛾くらいわかるよバカヤロウ(映画Brotherより)。影だけしかいないんです。

こんな幻想ってあるんですねえ。物凄く狐につままれたようなかんじで、あと羽根が当たりかけた左目が気になりつつ走り去った。それだけだ(橋本真也名語録より)。

先週から再び大地震が起きる夢を何度も見てる。ちょっと憑かれてます。違う疲れてます。

海がきこえる

海がきこえる

これをききながら走っていたのです。

映画のサントラってイメージが違ったり違和感を感じたりするものです。それは実際に映画で使われている時間が違うとか、音質が必要以上にクリアになるため曲として主張が強すぎるように聴こえてしまう、これけっこうあると思うんですが台詞とかぶっていると音量が絞られてしまうため「これ短い(台詞とかぶってない音楽主体のシーンの曲)」「これちょっと違和感あるし長い(台詞の下で背景を説明する音楽としてのみ機能してるシーンの曲)」というのが出てくる、といったかんじです。

さらに「これどこに使われてたの?」「あの曲好きだったのに収録されてない」というのもよくあることです。後のは本編制作と同時進行的にスコアを作る時はしょうがなかったりもするんでしょうね。もちろん収録時間や、場合によっては権利関係など別の問題の場合もある。サントラの作者が主張を入れてくることもあるだろうなあ。

ぐだぐだと長く前置きしましたけど、この「海がきこえる」も当時素晴らしい「控えめな」音楽を書かれていた作者さんの職人仕事として出来上がっています。やっぱり誰もが印象的と言ういくつかの曲は、私の音楽プレイヤーに常備されることになるでしょう。

これは但し単なるサントラというより、永田茂さんのアルバムです。高中正義だなーというようなトラックやなんだか聞き覚えの薄いトラックには違和感ありましたし(もちろん映画中のシーンに向けて作られているんですが、それほど重要でないシーンですし、長い・・・)、この映画にはきほん2つ3つしかメロディが無いけど、だからこそそれでもっとピアノソロを聴きたい、という気持ちも、アルバムとしての起伏の付け方とは相容れないもので、バランス的に映画とは違いすぎて落ち着かないなあとつい思ってしまう。

93年という段階では新鮮だったシンセピアノの響きが、「ちょっと前のケータイの着メロみたい」に聴こえてしまうのも残念だなあ。私も変わってしまった。

でもこの人のたとえば同時期に作られたジブリ製CM「そらいろのたね」(詰め合わせDVDに入ってた)のBGMなんてほぼこの映画のメインテーマに似た音符の少ない音楽だし、そういうのを集めたコンピでもあれば絶対聴くなあ。ピアノはすごいうまいです。

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ピアノの音がクリアすぎて名技性が見えてしまい、「ちょっと控えめにして・・・」と呟いてしまったけど、それは無理だよね。